私たちは気づかないうちに自分に騙されている
最近学んだ話で思わず唸ったこと。
それは「私たちの感情は望みをかなえるために、自分を騙す」ということです。
思考が感情と身体をコントロールしているのではなく、身体と感情が思考をコントロールし、欲求を満たすために、思考を利用している、という考え方です。
論理をつかさどる脳は、原始脳を基盤に成長しているからです。
私たちの行動は「理性」よりもはるかに強く「情動 emotion」によって支配されています。
「情動」とは聞きなれない言葉ですが、心理学用語で、怒り、恐れ、喜び、悲しみなど、比較的急速に引き起こされた一時的で急激な感情の動きのことです。
たとえば、マックス・プランク研究所の研究者がfMRIを利用して行った脳研究によると、被験者が判断を下す7秒前には、脳活動でその判断の内容を「予告」できるといいます。
意思決定は、潜在意識の段階で、すでに7秒も前に下されているのです。
ダーウィンは、動物での情動研究を基にして、情動を「非常事態にさらされた生物が、適切に対処し、生存の可能性を増加させるもの」であるととらえています。つまり、個体維持と種族保存を達成するためにあるのだというわけです。
危険、と脳が潜在意識で判断した場合、防衛本能のスイッチが自動で入り、身体と感情が思考をコントロールし、生存の可能性をあげる判断をするよう仕向けるのです。
太古からの経験則に従って行動しようとするので、より生存可能性が高かった手段として、人はリスクを取るより現状維持を望んだり、新しい環境に入ることを恐れたり、集団行動をとったり、権威に弱かったりするというわけです。
変化の速い現代では、現状維持の方がリスクが高いことも多く、人権や多様性を重んじる社会では考えや生活様式を改めた方が理にかなっているようなこともあります。そのような場合、脳の判断が、私たちに合理的ではない行動をとらせてしまうこともしばしば起きてしまいます。
では、どうすれば、潜在意識の段階で判断してしまう決定を、正しいと思う方向に覆すことができるのでしょうか?
まずは、このことを認識すること。
私が非合理な行動をするときは、脳が理由を勝手に作り出しているのではないか?
そして自分の行動を観察し、おかしいと思った時には自分に問うてみるのです。
どうしたら、自分の感情を思うように方向づけられるのか?
どうしたら、無意識の自分の感情に影響を与え、自分の望む決断をするようにできるのか?
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、都市封鎖や在宅勤務、ソーシャルディスタンスや非接触など従来とは次元の異なる生活様式を受け入れ、仕事の仕方を見つめなおす現代にあっては、知っておいて損のない概念であると思います。