MESSAGE 社長の思い
弁護士には社会を変えることができる力があります
だから持てる力をもっと社会のため、私たちのために役立てていってほしい。
私の切なる願いは社会に必要とされる弁護士を大勢増やすことです。
こんなふうに考えるのは、おそらく私の子ども時代の体験にあるのだと思います。
私が子どもだった、1960年代の日本では、高度経済成長の陰で、イタイイタイ病や四日市ぜん息など、人間の体を蝕む公害が全国各地で起きていました。それを弁護士が、被害者とともに公害排出企業や国を相手どり粘り強く裁判を続け、一つ一つ成果を勝ち取っていったのです。
私の家は印刷会社だったので、私の家もこの時期の裁判のほんの一端を担っていました。父と母は「なんとか裁判に勝ってほしい」といいながら、裁判のためのビラや署名用紙を印刷しては急いで納品する日々を送っていました。裁判が勝つか負けるか先行不透明で、いったい何年、何十年かかるかわからないという運動で、お金もありませんでした。あるのは「公害で苦しむ人をなくしたい」という共通の「思い」だけ。
「言葉」ではない「思い」は、幼い私の心にもひしひしと伝わってきました。
公害はやがて社会問題化し、大勢の人の知るところとなり、公害対策基本法が制定され、いまの環境基本法へとつながっていきました。
「何年かかるかわからない、勝つか負けるかさえわからない」
気の遠くなるような裁判を粘り強く闘い続ける弁護士が目の前に大勢いて、署名活動をし、ビラ配りをし、座り込みをしている。法律を武器に、国や大企業ともわたりあっている。弁護士はすごい。この思いとともに、弁護士という職業の社会的意義というものを強烈に肌身で感じたのです。
弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とするという弁護士法第一条の存在を知ったのは、ずっとずっと後になってからでした。
弁護士という職業の社会的意義に接したのは、子どものときだけではありません。1990年代、当番弁護士制度の立ち上がりにかかわらせていただいたときもそうでした。
当時は、被疑者段階での国選弁護制度がなく、私選弁護士を頼める人以外は弁護を頼むことができませんでした。そして「密室で行われる無理な取り調べがえん罪の温床になっている」と長いこと言われつづけていたのです。
後になって「わたしはやっていない」と無実を主張しても翻すことは困難で、一度無期懲役や死刑などの刑が確定してしまうと、裁判所が再審請求を受け入れることはまずなく、えん罪被害者はやってもいない罪を償うため、何十年も刑に服さなければならない、死の恐怖に晒されつづけなければならないのです。
こんな不条理があるでしょうか。
この状況にメスを入れたのが、被害者の一番近くにいる弁護士でした。
「これ以上えん罪被害者を生んではいけない」
このゆるぎない思いが「当番弁護士制度」を生んだのです。逮捕者=犯罪者という誤解から、「なぜ犯罪者を助けるんだ」という非難の声も根強いなかでの誕生だったのです。
あれから時代は様変わりしました。
基本的人権を擁護し、社会正義を実現する。
そんなのはしょせん理想論にすぎない。
昔だったからできた古き良き時代の話だ。
いまはやりたくても余力も時間もない。
こう思う先生もいらっしゃるかもしれません。
そうです、当時と今とではあまりに状況が異なります。夢を抱いて弁護士になったとしても、経済的な基盤が整ってこそ次の行動に移れるのです。確かにその通りです。私自身も経営者ですからよくわかります。資金繰りの大変さも骨身に染みています。
でも同時にこんなふうに考えるのです。
どんなに時代が変わっても、人々の思いは変わらない。
今の社会が、昔と比べてよくなったのか、といえばそうともいいきれません。別の新たな問題が私たちの生活に影を落としています。
時代は変わり、悩みも変わり、被害の様相が変わっても、助けを求めている人は依然として「そこにいる」のです。
そしていくら助けを求めたとしても、その人の気持ちに寄り添って適切な助言をくれる人、一緒になって闘ってくれる人がいなければ、一人では立ち往生してしまいます。
法律が大きな壁になって立ちはだかることもあります。そんなとき、弁護士が共感し味方になってくれるなら、これほど心強いことはありません。
どんな時代になろうとも、弁護士には手を差し伸べる力があるのです。
人の人生に深くかかわれる権利を公に与えられている、尊敬に値する職業なのです。
今でも、
「困っている人を助けたくて、誰かの役に立ちたくて弁護士になった」
という方は大勢いらっしゃいます。
ところが弁護士を取り巻く環境の方が、大きく変わってしまいました。
一時的な変化かもしれません。
しかし、自分の意志とは別に「やりたいことを諦める」、「才能が発揮できない」弁護士が増えてきているのだとしたら、そんな状況が長く続いていいはずがありません。大きな社会的な損失です。
初心を貫ける先生を増やしていくにはどうしたらいいのだろう。
そのためには何をすべきか。何が出来るのか。
そのひとつの答えを導き出すために、私たちの会社は「ただの印刷会社」ではなく、「弁護士」の為の「印刷会社」になることを選びました。
弁護士を集客の不安から解放する。
個々の弁護士が信頼関係にもとづいた独自の人脈を構築する方法をお伝えし、そのための道具も用意し、人脈の裾野が広がることで、集客の不安から解放する。社会貢献活動がしやすい環境を提供していく会社になる。
なぜなら、それが私たちの将来の安心や希望につながると信じているからです。
個々の弁護士の人脈が増えていくということは、さまざまな層の弁護士の味方が増えることでもあります。弁護士の味方が増えれば、弁護活動ももっと楽になる可能性があります。
せっかく難関の司法試験を通ったのですから「弁護士になってからが大変」ではなく「弁護士を職業に選んでよかった」という弁護士を一人でも多く増やしていきたい。
そうして大昔の私のように「弁護士にあこがれる」子どもたちが増えていってほしいと思っています。
その近い未来の為に私たちは活動しています。
協北印刷株式会 社代表取締役久保谷美幸